環境・社会・ガバナンス

 環境・社会・ガバナンス[ESG] (=Environmental, Social and Governance)

当節では、弊社アドバイザーが質疑応答フォーマットにより、いくつかの検討すべき課題をご提案します。企業は、経営環境の変化がビジネス・モデルに与える影響ならびに自社経営戦略の重要性をもっと認識する必要性があると考えます。また投資家が、ダーウィン進化論でいう「適者生存の原則」に則り、企業を評価していることも忘れてはなりません。以下ご参照ください。

  

岐路に直面する日本:
  持続可能な経済成長への道

日本の2011年の原発事故から何を教訓としますか?
明確性、透明性および適切な情報開示の必要性。日本政府はこれらの点において機能せず、エネルギー政策を含む日本経済の未来について簡潔な説明もなされなかった。グローバル・ステークホルダーは、数年前と比べ、日本をより政治・経済リスクの高い国、放射能からの健康リスクの高い国として判断しています。日本は、今回の原発事故を環境管理および監視機能を強化するための重大な警鐘として見なすべきです。

2012年4月

今後、日本はいかに名声を回復すべきでしょうか?
継続的かつ積極的な広報活動を通して対応すべきです。福島事故の後、海外メディアは、悲観的な見方を伝えており、日本へ渡航を希望する外国人は少ないです。まずは、日本が自信を取り戻すことが重要です。世界中の科学者の支援を得て、日本政府は世界中の人々を啓発し、信頼を回復させなければなりません。 政府は、客観的かつ独立した調査***を利用して、このたびの放射能露出から癌発生のリスクが増加することはほとんどないと説明しなければなりません。世界中の人々が納得すれば、海外からの需要と関心は少なくとも福島原発危機発生前の水準まで戻るでしょう。これが持続性ある経済成長に貢献する要因となります。(***ご参照:英国の血液専門医Robert Peter Gale氏、米国の放射能リスク評価専門家F. Owen Hoffman氏の調査)

2012年4月

日本がポジティブ・イメージを取り戻した後、次は何をすべきですか?
持続可能な成長およびエネルギー保障のための長期的なビジョンの策定です。経済成長を最優先にしなければ、他の政策に何の効果もありません。日本政府は、5年、10年、30年および50年後の国の進路を設定し、グローバル・ステークホルダーを啓発しなければなりません。日本は経済成長のための明確な目標を明示し、エネルギー、国際貿易、環境保全、財政問題それぞれの政策を調整していかなければなりません。明確な方向性がないと、国は、漂流し、少なくともさらに「失われた10年」へ入る可能性があります

2012年4月

長期的なビジョンは、何を焦点にすべきですか?
輸出:目に見える部分と目に見えない部分。日本は天然資源の少ない国であるため、輸出は経済の命綱です。ハイテク、ポップ・カルチャー関連、観光、医療、農産物などを主な原動力として、特定業種を指定すべきです。これらの潜在成長力のある分野はグローバル・マネーを呼び込むことができるかもしれません。輸出から生じた利益は、輸入物、特に重要な資源の決済に当てられます。

2012年4月

エネルギー政策はどうですか?
政府は、持続可能な成長のビジョンを達成するために最適なエネルギー・ミックスを提示すべきです。その開示は、複数の選択肢における良い点と悪い点について、国民と地方自治体に対して警鐘を鳴らします。考慮すべき要因は、雇用増減、地方経済への肯定的または否定的波及効果、各エネルギー源のコスト、安全性および安定性も含まれます。 例えば、原子力発電を受け入れるか、または拒否するか、の影響がより明確になってきます。そして、ステークホルダーは、国がいかに前進できるかについて見えてきます。今のところ、エネルギー政策をめぐって、不透明なままで、政界は行き詰まっており、悪循環に陥っています。

2012年4月

日本は、最適なエネルギー・ミックスの決定へ向けて何を考慮すべきでしょうか?
まず第一に、日本は、国内固有リソース(地熱、水力、風力、バイオマス、太陽光、海洋)、そして、その他のリソース(原子力、石油、ガス)をいかに利用するかについて明確にすること。財政上のコスト、資源の供給元としての地政学的リスク、効率性と資本回収および環境持続性は比較検討する必要があります。外部危機からの途絶を最小限に抑えることによるエネルギーの安定供給は、真のエネルギー保証につながります。

2012年4月

詳しく言いますと、最適なエネルギー・ミックスの決定には、どのような要因がありますか?
一方において、中東からの石油があります:これは効率的でそれほど高くない値段です。ただし、石油はCO2を排出し、供給の途絶ならびに極端な価格変動性があります。他方、太陽エネルギーは環境に大変優しいです。ただし、それは大変非効率で、最もコストの高いエネルギーの一つであり、そのエネルギーの獲得と貯蔵にはハイテクの設備が必要です。 それらの中間物として、地熱、石炭、ガスと原子力は、環境影響とコストとのバランスが取れれば、妥協案として提供できるかもしれません。炭素の回収および貯蔵のシステムは、新型の天然シェール・ガス革命の始まりにより多くの炭化水素を調達した場合、より多くのCO2排出という課題に対する支援材料となるかもしれません。

2012年4月

誇大広告にもかかわらず、再生可能なエネルギー源は思うほど効率的ではないと言うことでしょうか?
ある専門家は環境に優しいエネルギーなど妄想だと言っています。再生可能なエネルギー源は変わりやすいため、そのエネルギーの安定化はリチウム・イオン電池と他の複合装備が必要です。もう一つの問題は、重要な元素の調達です。リチウム、コバルト等の希少金属の採鉱は難しいし、限られた国に集中しています。例えば、世界のリチウム鉱物埋蔵量の50%はボリビアにあります。ナショナリズムの再燃による輸出制限はグローバル価格を押し上げることは明白です。 このように、再生可能エネルギー源への過剰な依存は、供給障害によって重要な元素の価格暴騰をもたらすかもしれません。皮肉なことに、このような資源を持つ国々は、政治的リスクが高い傾向にあります。そのため、再生可能なエネルギー源のみでは十分ではありません。エネルギーの保存および消費削減の強い対策が、持続可能性の鍵となります。

2012年4月

原子炉が全廃された場合、どうなりますか?
日本は、多大な財務上損失を被り、グローバル投資家は日本への投資を控えるでしょう。すべての原子炉が全廃された場合、電気料金は10年以内に倍近く上がるかもしれません。その上、それらの全廃は潜在的な財務上のコストも残します。 まず第一に、廃止された原子炉の多大な減価償却費。電力会社が一部国営化された場合、納税者は、追加の負担を負わなければなりません。 第二に、固定価格買取制度(フィード・イン・タリフ)による追加コスト。これは、電力会社が、再生可能エネルギー源への一部転換により、競争力がない事前決定された価格で電気を買わなければならないという制度です。また、電力の消費者は、電力会社による転嫁されたコスト上昇分を払わなければなりません。 第三に、変動費が高い傾向にある火力発電による追加コスト。炭化水素資源の輸入急増は国の財力を急速に浸食するでしょう。最終的に通貨の購買力、株式と債券の市場価値、そして最も重要なことは生活水準への悲惨な結末をもたらします。

2012年4月

原子炉の全廃に関して、非財務上のコストは何でしょうか?
社会的、経済的および環境に関するコスト。原子力エネルギー源を減らす、または廃絶するまでの移行期間では、電力供給制限または停電が予想できます。このような不透明要因は、新規事業投資を抑制させますし、より安く、安定的で、確実な電力供給源のある海外へ産業設備の移転を加速させます。さらに、停電は、消費者と事業主の心理を押し下げ、経済の潜在成長の足を引っ張るかもしれません。 これらの要因はネガティブな波及効果をもたらします。すなわち、産業の空洞化と雇用の喪失。さらに、火力発電は、CO2をより多く発生させ、京都議定書で同意された2020年までのCO2削減目標の達成はほぼ不可能になるでしょう(それは1990年レベルと比較して25%の削減)。最後に、日本は、グローバル・ショックからの影響を非常に受けやすい状況です。それは、液化天然ガス(LNG)の備蓄が2週間のみ、石油の備蓄が3か月のみという理由からも言うことができます。

2011年2月

  

最近の動向

最近の金融危機から何を学べますか?
より良いガバナンスの必要性です。まず、米国サブプライム・ローン危機を見ると、今になって思えば、本質的にクズ同然だった金融商品に高い信用格付けを与えたこと自体が明らかに問題でした。格付け機関は、リスクを適切に伝える義務を果たしていませんでした。 次に、地中海発の債務危機を見ると、該当する国々は昔から税収入以上の歳出を抑制すべきでした。さらに、外部機関は国の財務データの信頼性を確認すべきでした。結論を言えば、国または企業レベルにおいて、適切なガバナンスが機能していれば、危機を避けることができただろう。

2010年7月

労働方針は重要になりつつありますでしょうか?
はい、大変重要です。社会は急速に高齢化が進んでいます。一方ある社会では若い層が多いです。前者の場合、将来へ向けて、企業は65歳以上に定年を延長し、女性を更に受け入れて、より流動性かつ柔軟性ある雇用環境を作ることにより労働力不足に対処しなければなりません。後者の場合、多くの若者が存在する地域では、企業は児童労働を利用しないよう注意しなければなりません。さらに、政治的に抑圧された国々では、企業とその仕入先等は、強制労働・拷問・その他望ましくない労働上の問題について注意しなければなりません。こうした課題は企業グループ内のみではなく、業者、仕入先およびその他の利害関係者においても考慮されなければなりません。

2010年7月

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